白干梅の作り方
産地では、南高梅、小梅を塩だけで漬け、白干梅を作ります。白干梅は長期保存が可能(塩分20%以上の場合)で、いったん農家で白干梅をつくり、業者に出荷、業者が白干梅から減塩梅干しや調味梅干しを作っています。ここでは失敗しない白干梅の作り方、減塩方法、しそ漬け、はちみつ漬けの方法をご紹介します。
※塩分の基本は20%です。それ以下ですとカビが発生しやすくなります。
※他の産地の梅の漬け方については、その産地にお問合せください。
Ⅰ.梅を漬ける前の下準備
①梅干しには、黄色く熟した梅(南高梅、小梅など)を選んで使用します。
熟度にばらつきがある場合、熟度でより分け、適熟の梅から漬け、熟度が足りないものは2~3日追熟して追い漬け(追い漬け分の塩も追加)すると良いです。熟度は熟度表をご覧ください。
②梅を水洗いし、ザル等で軽く水気を切ります。水気が若干残るほうが塩を梅全体にまぶせるので、梅酢が上がりやすくなります。布などでふき取ると雑菌がついたり、梅の実に傷がついたりしてカビ(酵母)が発生しやすくなります。
アドバイス
■追熟させるときは、水に浸けず、日陰で新聞紙等にくるんでおくか、段ボールに入っている場合は、フタを開けたままにしておくと2~3日で黄色くなります。
■梅のヘタを取るときは、梅が傷付きやすいので要注意。無理にヘタを取らなくても大丈夫。
■南高梅はアクが少ない品種。黄熟した梅なら、アク抜きは不要です。長時間水道水に漬けると梅の実が変色することがあります。どうしてもアク抜きをする場合は2時間程度で十分です。
■容器や道具は消毒を。陶・ガラス製の容器は、熱湯をやかん等で容器や道具に回しかけ、しっかり乾かします。ポリエチレン製の容器(底などにある「家庭用品品質表示」を参照)は、熱湯消毒すると変形の恐れがあるので、酢をキッチンペーパーに含ませて拭きます。
Ⅱ.梅の漬け方
紀州梅の漬け方は、塩(粗塩)の量が、南高梅では梅の重量の20%、小梅では梅の重量の18%で漬けるのが基本です。おもしは、梅の重量が1~2㎏までは同量、2~10㎏までは2㎏のものを使ってください。おもしが重すぎると梅が潰れてしまいます。
1.基本的な漬け方
①上記「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」をします。
②塩の分量の約半分と梅をポリ袋に入れます(梅は2kgずつ小分けすると簡単)。塩がまんべんなく梅にいきわたるように袋に入れたまま転がします。
③漬物樽の底に霧吹きで焼酎を吹きつけ、②の梅を入れ、その上に残りの塩をのせます(置き塩)
④押しブタをし、おもしをのせ、容器にフタをして約1か月冷暗所に保存します。
※2~3日後に梅酢が上がっているか確認(※上がっていない場合、A-⑩参照)。
梅干しの材料(南高梅)
南高梅(黄色く熟したもの) | 10kg |
塩(粗塩) | 2kg |
漬物用ポリ袋 | 1枚 |
霧吹き | 1個 |
35度以上の焼酎 | 適量 |
おもし(2㎏程度) | 1個 |
40㍑漬物樽(フタ付き) | 1個 |
押しブタ | 1個 |
梅干しの材料(小梅)
小梅(黄色く熟したもの) | 10kg |
塩(粗塩) | 1.8kg |
漬物用ポリ袋 | 1枚 |
霧吹き | 1個 |
35度以上の焼酎 | 適量 |
おもし(2㎏程度) | 1個 |
40㍑漬物樽(フタ付き) | 1個 |
押しブタ | 1個 |
→「Ⅳ.天日干しの方法」へ
アドバイス
■梅酢が上がったあと、梅の重量の約5%の酢を入れ、ラップ等で梅酢表面を覆い、空気にふれないようにすれば、白カビ(酵母)の発生する可能性が少なくなります。
※黄色く熟した梅なら、約2日で梅が漬かる程度の梅酢が上がります。
冷暗所ってどんなところ?
ひとくちに「冷暗所」といっても、法律などによって定義が異なりますし、個人によってもとらえ方が異なります。
このマニュアルでいう冷暗所は、「家の中で、できるだけ温度変化が少なく、暗く涼しい場所」です。
2.簡単! ポリ袋を使った漬け方
①上記「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」をします。
②ポリ袋の内側に霧吹きで焼酎を吹き付けます。
梅と塩を入れ、袋に入れたまま転がし、よくなじませ、ポリ袋ごと容器に入れます。ポリ袋は空気が出るように軽く輪ゴムで留めます。
③新しいポリ袋に水1リットル(袋が破れたときに備え、塩分20%の塩水がお勧め)を入れて硬くしばり、さらに袋を二重にして硬くしばると1kgのおもしが完成。
④おもしをのせ、容器にフタをして約1か月冷暗所に保存。
→「Ⅳ.天日干しの方法」へ
材料
南高梅(黄色く熟したもの) | 1㎏ |
塩(粗塩) | 200g |
※小梅の場合は梅1kg、塩(粗塩) | 180g |
ポリ袋(厚さ0.03ミリ以上) | 3枚 |
霧吹き | 1個 |
35度以上の焼酎 | 適量 |
5㍑ポリ容器等(フタ付き) | 1個 |
※おもし用のポリ袋は、再利用すると破れる原因に。必ず新しいものを!
また、硬くしばれていない等で水が漏れると失敗の原因になります。
3.チョー簡単!! ストックバッグを使った漬け方
①上記「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」をします。
②ストックバッグに梅と塩を入れ、梅に塩がまんべんなく付着するように、軽くもみます。
③②を梅が一列になるように受け皿に並べ、空気を抜きながらジッパーを閉めます。
※液もれに備え、袋を二重にし、受け皿を使用すると万全。
④均一に圧力がかかるようにおもしをのせ、冷暗所で約1か月保存。
⑤ストックバッグ内に空気が発生したら、こまめに空気を抜いてください。2~3日で梅酢があがります。ある程度梅酢が上がるとおもしを取ります。
→「Ⅳ.天日干しの方法」へ
材料
南高梅(黄色く熟したもの) | 1kg |
塩(粗塩) ※小梅の場合は梅1kg、塩(粗塩)・180g | 200g |
厚手のストックバッグ ※丈夫で新しいものを推奨 | 2枚 |
受け皿(バットなど) ※ホーローまたはプラスチック製 | 1個 |
おもし(1㎏) | 1個 |
参 考 おもし・押しブタ・漬物容器のフタの代用品について
【おもしの代用品】
①厚手ポリ袋(厚さ0.03ミリ程度)2枚を使って…水1リットルを二重に重ねた厚手ポリ袋に入れて硬くしばると1kgのおもしが完成です。このおもしの場合、おもしが梅の上に広がり空気を遮断する役割をします。また、おもしが梅酢に浮くため余計な重みがかかりません。
②ペットボトルを使って…1リットルの空きペットボトルを洗浄・殺菌し、水を入れると1kgのおもしになります。ペットボトルの場合は押しブタが必要です。
【押しブタの代用品】
お皿を洗浄・殺菌して代用できます。ただし、物によっては梅の酸で塗装が傷む場合があるので、厚手ポリ袋などに入れてお皿が梅酢に触れないようにしてください。
【漬物容器のフタの代用品】
漬物容器のフタが無い場合、大きめのポリ袋や布を容器に被せ、ひも等でしばります。
Ⅲ.その他の漬け方
1.梅漬け
①青い南高梅や小梅を使い、「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」をします。
②「1.基本的な漬け方」「2.ポリ袋を使った漬け方」「3.ストックバッグを使った漬け方」、いずれかの方法で梅を漬けます。
③約1か月漬け込んだあと、つぼや密封ビンに移し、梅酢に漬けたまま冷暗所で保存します。
梅漬けの材料
南高梅(青いもの) | 1㎏ |
塩(粗塩) | 200g |
小梅漬けの材料
小梅(青いもの) | 1㎏ |
塩(粗塩) | 180g |
2.しそ漬け
①「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」後、「1.基本的な漬け方」「2.ポリ袋を使った漬け方」「3.ストックバッグを使った漬け方」、いずれかの方法で梅を漬けます。
②赤じそが出回る7月上旬頃になったら、もみじそ(下記参照)を作ります。
※市販のもみじそでも美味しく漬けられます。
③梅の上に、もみじそをすき間なく平らにのせます。
④もみじそを作るときにできた赤梅酢を加えます。
⑤①で選んだ漬け方で④の作業(おもしをのせる)を行い、約1か月冷暗所に保存します。
⑥梅を取り出し、天日干しをします。
※干さない場合は・・・
漬け込みが終わったら、つぼや密封ビンに移し、赤梅酢に浸けたまま冷暗所で保存します。
しそ漬け梅干しの材料
南高梅(黄色く熟したもの) | 1kg |
塩(粗塩) | 200g |
しそ漬け小梅干しの場合
小梅(黄色く熟したもの) | 1kg |
塩(粗塩) | 180g |
もみじその材料
赤じそ | 500g |
粗塩 | 100g |
※市販のもみじそでも可
アドバイス
■しそ漬け梅干しを作る場合、しそ、梅が梅酢から出ないように注意してください。空気に触れるとカビが発生しやすくなります。また、もみじそを最初から入れると、塩だけで漬けた場合に比べ梅酢が上がりにくくなりますので、ある程度梅酢が上がってからもみじそを入れることをお勧めします。
参考 「もみじそ」「ゆかり」の作り方
もみじそ
①大きくて両面が紫紅色の葉だけを選ぶ。
②水洗いし、十分に水気を切る。
③容器に赤じそ全量と塩1/4を入れ十分もみ、あく汁を捨てる。さらに塩1/4を入れ再度繰り返し、最後に残り1/2の塩を入れ同様に。
④あく抜きした赤じそに梅酢を加え、もみほぐす。
※もんだあとの赤梅酢は、しそ漬けや料理に利用。
ゆかり
①しそ漬け梅の「もみじそ」を2~3日、天日で干します。1枚1枚広げると、早く乾き、色も香りも良くなリます。
②すり鉢で細かくすり、万能濾し器でふるい、細かくします。
しそ漬け梅干し作り(もみじその分量)
■最初から梅と一緒に漬け込む場合
【梅1kgの場合の分量】
軸を除いた赤じそ | 500g(梅の50%) |
粗塩 | 100g(赤じその20%) |
梅酢 | 1カップ |
■白干梅、小梅干しで作る場合
【梅干し1kgの場合の分量】
軸を除いた赤じそ | 500g(梅の50%) |
粗塩 | 100g(赤じその20%) |
梅酢 | 1/2カップ |
Ⅳ.天日干しの方法
1.天日干し(土用干し)の方法
①天気予報で晴天が続く日を見極めます。
②漬物樽等からザルに梅を取り出し、軽く流水で洗い、浅いザルに並べます。ザルは、直に地面に置かず、ブロックなどを台にして置き、下からも風が通るようにします。また、ザルの3~4方にひもを結びつけ、物干し竿につるす方法もあります。
③日に1回程度梅を裏返しながら、梅の大きさや天候により2~4日(右記参照)太陽に当てます。夜間は、屋内に取り込み、布や新聞紙等をかけておきましょう。朝か夜、梅が冷めたときに梅を裏返すと、梅がザルにくっつきません。
④干し上がると、梅を冷まし、つぼか密封ビン等へ保存します。
アドバイス
■梅酢は清潔なふきん等で濾して別容器に入れ、料理等に利用できます(C-③参照)。
コーヒーフィルターもおすすめです。
トピックス
■小梅は5月中旬~下旬、南高梅は6月上旬~7月上旬にかけて収穫され、漬けられ、梅雨が明けると天日干しの作業に入ります。ちょうど夏の土用(7月下旬~8月上旬)に当たるため「土用干し」とも言われますが、土用の期間に限らず、3~4日晴天が続くことが見込まれれば、いつ干しても大丈夫です。
◇天日干しの目安
1日の日照時間を10時間として、
◎南高梅3Lサイズ(3~4日)、
◎南高梅L~2Lサイズ(3日)、
◎小梅(2日)が基準です。
重量だと漬けた梅の55%程度が目安です。1kgの梅を漬けたら550gとなります。干し過ぎにはご注意ください。
底が平らで浅いザル(盆ザル、浅ザル、えびら)が良いでしょう。
2.お手軽しそ漬け梅(容器に入れたまま天日干し)
①「Ⅰ.梅を漬ける前の下準備」をします。
②ポリ袋に梅と焼酎を入れてなじませたあと、半量の塩を袋に入れて同様になじませます。
③梅を容器に入れ、残った塩を上にのせます。数日して、梅酢の出が悪い場合は、梅酢と塩が混ざるよう容器をゆすります。
④梅酢が上がったら、もみじそを作ります。
⑤もみじそと、もみじそを作るときにできた赤梅酢を加え、約1か月冷暗所に保存します。
⑥約1か月後、容器のフタを取り、3日間容器ごと天日で干します。
⑦梅を取り出し、ビンに小分けにして冷蔵庫で保存します。
材料
南高梅 | 1kg |
塩(粗塩) | 150g |
35度以上の焼酎 | 150cc |
漬物用ポリ袋 | 1枚 |
3㍑密閉式容器 | 1個 |
もみじその材料
赤じそ | 500g |
粗塩 | 100g |
※市販のもみじそでも可
アドバイス
■赤みを均一にするには、ときどき容器を逆さにするなどして、よく混ぜてください。ただし、梅に傷がつくと梅酢が濁るとともに、カビ(酵母)の発生原因にもなりますのでご注意ください。
■しそ、梅が梅酢から出ないように注意してください。空気に触れるとカビ(酵母)が発生しやすくなります。
■長期保存の場合は、上記の天日干しをお勧めします。
白干梅の加工方法
1.減塩梅干しの作り方(塩抜きの方法)
①白干梅200g(3Lサイズ8~10個程度)と水1リットルを、広くて浅い容器に入れます。
ぬるま湯(30~40℃程度)を使うと塩抜きしやすいです。
②お好みに応じて、30分~数時間程度で取り出し、ザルで1~2時間水切りします。
③塩抜きをした梅は必ず冷蔵庫で保存し、1週間を目途にお早めにお召し上がりください。
◇時間の目安
一晩(約8時間)浸けておくと、塩分は約14%になります。
約12時間浸けたあと、塩水を捨てて、再度①の作業を行い12時間置くと塩分
は約5~10%になります。
2.甘い梅干しの作り方
①砂糖、粉末だし、しょうゆ、みりんを水に溶かし調味液を作ります。
※粉末だしと水の代わりに、煮出し汁を使えばさらに良いでしょう。
②調味液をひと煮立ちさせ、冷まして酢を加えます。
③減塩梅干しを調味液に漬け込み、冷暗所で7~10日保存します。砂糖が沈殿するので、1日に1回容器を動かし、調味液が均一になるようにします。
④できあがったら冷蔵庫で保存し、1週間を目途にお早めにお召し上がりください。
材料
減塩梅干し | 200g |
保存容器 | 1個 |
調味液材料
砂糖 | 40g |
しょうゆ | 小さじ1強 |
みりん | 小さじ2 |
酢 | 40cc(大さじ2+小さじ2) |
粉末だし・・・少々 水・・・・・・・・・約140cc | ※左記の代わりに鰹節等の煮出し汁(約140cc)でも可 |
3.簡単はちみつ梅干しの作り方
①砂糖、みりん、はちみつ、酢、水をよく混ぜ合わせ調味液を作ります。
※煮立たせる必要はありません。
②減塩梅干しを調味液に漬け込み、冷暗所で約1週間保存します。砂糖が沈殿するので、1日に1回容器を動かし、調味液が均一になるようにします。
③できあがったら冷蔵庫で保存し、1週間を目途にお早めにお召し上がりください。
材料
減塩梅干し | 200g |
保存容器 | 1個 |
調味液材料
砂糖 | 40g |
みりん | 40cc(大さじ2+小さじ2) |
はちみつ | 40cc(大さじ2+小さじ2) |
酢 | 40cc(大さじ2+小さじ2) |
水 | 70cc |
4.白干梅で作る 基本的な「しそ漬け梅干し」
①容器に白干梅と、もみじそを交互に入れます。
②全体が十分浸かるまで梅酢を入れて冷暗所で保存し、約1か月漬け込みます。
※梅酢を入れなくてもできます。
③干したものがお好みの場合は、1日、天日干しをします。
材料
白干梅(南高梅・小梅) | 1kg |
もみじそ | 500g |
梅酢 | 適量 |
3㍑容器 | 1個 |
アドバイス
■調味中にかき混ぜるときは、梅に傷が入らないよう注意してください。